小説の基本構造

フーガ (文庫クセジュ 674)

フーガ (文庫クセジュ 674)

二声対位法

二声対位法



愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ』では、繋がった物語の部分と告白宿の客たちや街の住人たちの告白が、交互に出てきます。

これは、何も知らないと、ふーん、と読み流してしまう場所なのですが、タイトルにある”フーガ”。これは、ただ、適当につけたわけじゃないんですね。この小説は、音楽上の「フーガ」形式によって作られています、ということなのです。

この「フーガ」形式というのが、ものすごく難しい音楽形式なのですが、琴音さんは、バッハが、楽器フーガ音楽を作ったように、小説フーガを書いています。

厳密な規則は、ここでは書ききれないのですが、フーガは、多声音楽であり、また、模倣形式を基本とします。物語の部分と告白の部分が、交互に出てくるのは、フーガ形式では、主題提示部嬉遊部という自由演奏の部分が繰り返されるからです。

他にも、多声模倣の規則が、小説の中に、きちんと入っています。

フーガ形式がわかればわかるほど、面白く読めるのが、『愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ』なのです。

琴音さんは、ブログ愛をめぐる奇妙な告白のためのブログ」で、この小説は、読み終わった後、ドラクエのように遊べるとおっしゃっていますが、まず、仕掛けの鍵のひとつは、ここにあるのじゃないかなぁと思います。

そんなに難しいなのぉ?と思われた方、安心してください。

私も、最初は、全然、フーガ形式なんてわからずに読んで、素直に感動しました。
泣きました。
ただ、フーガ形式がわかると、より楽しい読書ができると思うのです。

わざわざ、難しいを買うのはなぁと思われる方は、「Wikipedia」が、とても役に立つと思います。Wikipediaで満足できないほど、はまっちゃった人が、私のように、本を買えばいいのではないでしょうか?