静かな本

『愛をめぐる奇妙な告白のためのフーガ』の中で、悪童日記三部作の第二部のテーマは、”自他の概念の破壊”と書いてあった。難しい。アイデンティティという言葉があるけれど、うまく日本語にできない。そういう難しいテーマはわからないけれど、静かな小説で、私は好きだった。双子が双子ではなくなっているのに、誰一人村人は気づかない。そんな状況から物語は始まる。切ない恋、切ない愛。第一部の強い双子は、もういない。だから、第二部が好きではないという人もいると聞く。でも、私は、この『ふたりの証拠』に溢れる悲しみが好きだ。本当に、夢のように美しい話だと思う。